2017
06.03

『イシュタルの娘ー小野於通伝ー』(15)

Category: 少女漫画
大和和紀『イシュタルの娘ー小野於通伝ー』第15巻(講談社、2017年)、読了。
徳川秀忠、江与の娘の和子の入内に付き添うことになった、於通と於図。
和子と於図は姉妹のよう、窮屈な江戸城を出て、和子は楽しそう。
そして、和子が入内する帝もまた、自由を求め、青侍のなりをして市中へ。
和子のために、子までなした、愛するおよつと別れさせられ、やりきれない帝。
於図は、入内におびえる和子の希望で、清水寺に案内することに。
警護を頼んだのは、あの真田信政だった。
ところが、祭りの喧騒にはぐれた、和子は豊臣方についた者に狙われる。
そこはよき少女漫画の世界、和子を助けたのは、偶然にも、変装をした帝……。
雨の夜を過ごし、謎の青侍(実は帝)に清水寺まで連れて行ってもらう和子。

 いかん いかん! 朕としたことが何をしようと…?
 あんな年若い しかも嫁ぎ先の決まっているものを
 あの娘といる間 いやなことは忘れられた …ええ娘やった
 けど…もう二度と会えまいな
 朕は徳川の娘と結婚するのや…

 …だから わたし… もう大丈夫なの
 入内しても… どんなことがあっても…
 あの「お好きさん」が胸の中にいるから…

(こういう、いかにも少女漫画的な偶然と運命の物語、すばらしい。)
いよいよ入内、盛大な行列は、於通が平安時代の文献を調べ、
大臣の姫君の入内の様子を再現したもので、見物衆の心をつかむ。
後水尾天皇は25歳、徳川和子はまだ14歳。
ところが、婚礼から10日が過ぎても、帝のお渡りはない。
仲良くなった、およつ所生の賀茂宮が急死、おふくの命令によって菓子に毒が。
その後も、帝の御子たちが不審の死を遂げる。
生命を狙われていると思う、およつは梅宮を連れて仏門に入っていく。
何もかも自分のせいだと悩む和子は、井戸に身を投げようとして、
これもまた、少女漫画的な展開で、助けたのは帝であった。
そうして、いろいろな犠牲はあったものの、「くずきりの恋」は成就する。
みごと入内を成功に導いた於通による徳川家康像が、大養寺に奉納される。
そのころ、真田家では小松姫が死去。
そんなとき、市中の本屋から、於通に女文字の教本の依頼が。

 世の中がこうして落ちついて参りまして 
 人々の目がようやく教養にむけられるようになりました
 大名の奥方はもとより 一般の婦人まで
 美しい文字を書きたいという願いをかなえてさしあげたいのです

若い於図を中心に大変な作業が始まったが、於図が真田信政の子を懐妊。
おふくが於図を家光の側室にと考えていたことから、秀忠は、
真田家を上田から松代に国替えし、上田攻めで恥をかかされた復讐を。
和子が出産した内親王に、於通は帝王の星を見る。
連載開始から10年、予告によれば、次の第16巻で遂に完結か。
2017
04.26

『とりかえ・ばや』(11)

Category: 少女漫画
さいとうちほ『とりかえ・ばや』第11巻(小学館、2017年)、読了しました。
主上や東宮を守るために、生命がけで呪詛の証を奪った睡蓮。
銀覚の呪詛の証は吉野の宮からもたらされたものの、睡蓮は行方不明に。
東宮位を去る決意をした女東宮は、睡蓮を探しに行きたいと願う。

 あの方は この鞍馬山で生きておられる
 わしは この山に立ち入った時 何か明るいものを感じた
 必ず生きておられると信じている

祈りを捧げた女東宮は、睡蓮とともにたどり着いたことのある巨木のもとに。
その近くの社(やしろ)に導かれると、そこに、睡蓮は倒れていた。

 東宮ではない… ただの睡蓮を恋ふる女子じゃ
 まことの名で
 光子 私のまことの名は月光(つきみつ)です
 まるでこうなる宿命だったかのよう…

睡蓮と女東宮が夫婦になれる日が来るのか、そして、沙羅双樹は。

 主上は 私の嘘を許して下さるだろうか?
 「昔沙羅双樹の右大将として お仕えしていたのは私なのです」
 ーーなどと… いや 主上が主上である限り許してはならないのではないか?
 二心なく主上に尽くしているつもりでも
 信頼して下さっている主上に対する裏切りなのだからーー
 これは 私にどこまでもついて回る呪いーー 祓い清めることのできぬ汚れ…

あら、ここにも、「呪い」という単語がまたも見えます。
主上は、「天の川を渡りたい」と言うが、沙羅双樹は喜べない。

 私は…まだ渡れませぬ 兄のようには…
 呪いが… 解けぬのです 私の中では… 

もう1人、「呪われている」と言っていた人物を思い出した主上は、
兄妹が秘密を抱えていると思うものの、入れかわりを解いたとまでは思わない。
「尚侍が女のなりをした男だとしても 私は思うことができるだろうか?」
そして、ついに入れかわりを想定しつつ、苦悩する主上は女東宮を問いつめる。

 いくら二人が変わったとしても 決して変わらぬものがございました
 それは… 上様への尊敬と身を尽くす心です

梅壺の女御のもとにも、都を追われた銀覚から、
沙羅双樹と睡蓮が入れ代わっている、と密告する手紙が届き……。
第11巻、いつも以上に濃密だったように感じました。

余談
4月期クールは見応えがあるドラマばかり、「母になる」も。
虐待されている子を救ったと思っていた、と言う、広の育てのママの門倉麻子。
麻子の立場は、「Mother」で、松雪泰子さんが演じた奈緒と同じだ。
あの名作も、日本テレビの水曜ドラマだった。
もちろん『八日目の蟬』にも似ているのだけど、麻子はもう1人の奈緒かな?
(予告からすると、麻子が広を手放したのは刑に服していたから?
そうすると、罪の内容はともあれ、「Mother」で田中裕子さんが演じた、
奈緒の実母、葉菜とも通じていくのだろうか。)
壊れた洗濯機を買い替えずに直すように、家族を再生できるか。
再放送の「こころ」を見て、最近のご活躍を見ると、
小池栄子さん、いい女優さんに成長して、実力をつけたなあと思う。
2017
04.25

『おちくぼ』(3)

Category: 少女漫画
大変遅ればせながら、山内直美『おちくぼ』第3巻(白泉社、2016年)を読了。
継母たちが石山寺に出かけている、豪雨の夜、少将が苦労して訪れる。
そして、三日夜の餅を食べる、姫君と少将。
少将がまだ帰らないうちに、予定より早くに戻ってきた継母は、
几帳の影に隠れた少将の前で、姫君やあこきを大声でしかりつけ、鏡の箱を奪う。

 姫にお似合いなのは やはり先ほどの鏡箱のような美しいものばかりでしょう
 こうして目を瞑れば わたしには簡単に思い浮かべることができます
 螺鈿や象眼で飾られた美しい塗りの道具類
 青々とした御簾の影が落ちる六尺の几帳 
 その几帳を彩る帷子の練り絹が風に舞う様子
 そして 高麗端の畳の上には 紅の薄様のかさねに撫子の細長のあなたが
 扇を手に脇息にもたれていらっしゃる
 ほのかに香るのは 控えめに薫きしめた香なのか 庭に咲く花の香なのか…

少将の言葉やあこきの説得にも関らず、姫君は自分に自信がもてない。
継母から代わりにと贈られた、古びた鏡箱の方が自分にふさわしいと思ってしまう。

 では姫さまは 少将さまが姫さまをこのお邸から救い出してくださったなら
 少将さまのお気持ちにお応えされるのでしょうか!

 そうね そのようなお伽噺のような夢が叶ったら とてもすてきでしょうね

そんなとき、帯刀が姫君から少将への手紙を落としてしまい……。
拾った藏人の少将の妻、三の君が姫君の筆跡であると気づいてしまう。
一方、少将には、姫君の異母妹、四の君との縁談が持ち込まれる。
継母に繰り返しいじめられ、「役立たず」などと罵倒されて育ってきたせいで、
姫君は、自己評価の極端に低い、自信のない女性になっている。
そのあたりが、現代の母娘関係の問題にも通じるところだと思いました。
2017
04.24

『ちはやふる』(34)

Category: 少女漫画
末次由紀『ちはやふる』第34巻(講談社、2017年)、遅ればせながら読了。
高校3年生の秋、こちらもラストに近づいているのでしょうか。
千早たちは部活引退、「宝物」になった2年半の時間をどうしよう……。
耳で取る周防名人、目と手の整合作用で取る詩暢ちゃん。
「うちのそばにはいつも 百枚の札がいてくれますので 
さびしいと思ったことはありません」
千早の武器は仲間たち、でも、孤独な詩暢ちゃんには「百枚の札」がある。
そう言いながら、かるた会に参加したい気持ちもある?

 箱の中でずーーっと 開けても開けなくても
 なんやらかんやらおしゃべりしてるのが札です
 それが聞こえてしまう 箱を開けずにはいられましょうか
 うちは 札はみんなこんくらいの 小さな神様みたいに見えてます
 みんなとってもかわいくて わがままです
 この子たちと この札たちと 離れずに生きていくのが 私の夢です

あ、この詩暢ちゃんの思いは、この作品でもっとも胸を打たれたところ。
千早もまた、この思いに揺さぶられ、共感して、クイーンを目指す決心を新たに。
千早は、詩暢ちゃんの孤独もわかっていて、そばに行きたいと思っている。
周防名人に近い、千早の耳の良さにも、ピークがある。
それは、まさに今かもしれない。
太一は、周防名人の特殊な感覚も期間限定だと悟っている。
そして、須藤さん、「おれがかるた協会の会長になったらおもしろくねえ?」
須藤さんが名人になりたいのは、その先の会長を夢見ているから。
「後輩のかるた部のやつらが 安心して楽しくかるたやれるように」
一方で、プロになるためにテレビ出演もこなす詩暢ちゃんに異変?
札たちの声が聞こえなくなり、また孤独を感じる。

 うちには かるた楽しむより 強くなる道しか選ばせてくれへんかったのに
 いつも いつもや うちは変われん うちは一人や
 いつもここに戻ってくる

かるたを続ける道を模索しても、それが幸せとは限らない?
「強くなりたい」と無邪気に言う女の子は昔の詩暢ちゃん、その子に救われた。
「詩暢ちゃんになにか呪いをかけてたのは 伊勢先生でしょう?」
(最近、「呪い」という言い方が流行っているのか。)
私は詩暢ちゃん贔屓なので、今回はとても読み応えがありました。

余談
再放送で見た、「日本人のおなまえっ!」、「子」のつく名前の特集。
1900年頃に「子」のつく名前が増えた、というのは一般的な感覚でもある。
史実じゃないけどね、「花子と呼んでくりょう!」を出さないなんて、
NHKとしては、ちょっと残念でした(それを楽しみにしていたのに……)。
与謝野晶子や津田梅子が、「子」を名乗って社会で活躍したことと関わるのに。
2017
04.23

『海街diary 恋と巡礼』(8)

Category: 少女漫画
吉田秋生『海街diary 恋と巡礼』第8巻(小学館、2017年)、読了しました。
サッカー強豪校への進学を決意したすずにとって、姉たちと過ごす最後の夏。
妊娠したチカちゃんは、姉たちにも、店長さんにもそれを秘密に。
もう1度エベレストに挑戦すると決めた彼を、引きとめたくはないから。
この物語の根底にいつも死があって、その中でチカちゃんに新しい生命が宿った。
「臆病だったあの頃を取り戻すために あの場所に戻ろうと思う」
生きる、という方向に、作中人物たちが舵を取り始めた。
すずは静岡に、チカちゃんも結婚して、あの大きな古い家を出ていく。
佳乃も坂下課長といい雰囲気、幸も井上監督と結ばれた。
それぞれがあの家から出ていくとき、この作品も終わるような気がします。
幸は、あの家を守っていくことになるのだろうか。

余談
村上佳菜子さんが、国別対抗戦のエキシビションで、現役最後の演技。
五輪が終わると世代交代、ということが多かったと思うけれど、
今回は、五輪を翌年に控えて、引退が相次いだ。
先輩たちの現役生活が長く、下の世代の成長が早かったけれど、
村上佳菜子さん、もっと評価されてもよかった選手。
明るくて感情を隠さないキャラクターは、アイスショーで映えそう。
コーチになりたい、ともっと若い当時から言っていた彼女なら、
引退後も、彼女らしいキャリアを重ねてくれるだろう、と期待します。
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