「漱石直筆、友人宛ての手紙発見 『独リボツチデ淋イヨ』」

電子の波に乗っていて、夏目漱石の手紙発見の記事に再会しました。

 漱石直筆、友人宛ての手紙発見 「独リボツチデ淋イヨ」

 夏目漱石(1867~1916)が英国留学中に、
 友人に宛てた自筆のはがき3通がみつかった。
 長年所在がわからなかったが、
 福井県立こども歴史文化館(福井市)が入手し、県が23日発表した。
 異国生活での率直な思いがつづられ、専門家は、
 留学時代の漱石の心情や友人との交流を探る貴重な資料として注目する。
 はがきは、福井出身の国文学者の芳賀矢一(1867~1927)に宛てた1通と、
 ドイツ文学者の藤代禎輔(1868~1927)に宛てた絵はがき2通。
 こども歴史文化館によれば、3人とも東京帝国大学に学び、
 1900年に同じ船で欧州へ渡り、
 芳賀と藤代はドイツへ、漱石はロンドンへ留学した。
 1900(明治33)年11月21日付の藤代への絵はがきでは、
 漱石がロンドンに到着して1カ月も経たないうちに、
 「僕ハ独リボツチデ淋イヨ」と記し、
 英語に苦労していることなどを打ち明けている。
 藤代へのもう1通は01(明治34)年1月3日付で、
 「金と不便と遠慮が鉢合わせをしてとても謹直だ」
 など下宿生活の近況を報告している。
 また、芳賀へのはがきは01年8月1日付。
 留学中に病気となり帰国した学友の死を知った芳賀が、学友を記念する
 文庫を設立しようと呼びかけたことに漱石が賛意を示す内容だ。
 いずれのはがきも大正時代に刊行された漱石の全集に掲載された後、
 はがきの実物は所在不明となっていた。
 こども歴史文化館の学芸員らが昨年9月、福井市の古書店で発見した。
 (2018年5月23日「朝日新聞」電子版)

手紙はすでに全集に掲載され、その後に実物が行方不明になっていたらしい。
そういう話をよく目にしますが、きちんと保管されなかったのか。

余談
視聴が追い付いていない「半分、青い。」、鈴愛の「神回」。
朝ドラのヒロインは、夢も恋も手に入れ、その後に夫を喪ったりするけれど、
ドラマのちょうど中盤で、鈴愛は、「私には何もない」。
一方の律は、仕事も結婚も、一戸建ての家も手に入れている?
鈴愛の人物造型は、歴代ヒロインのいい子ぶりへのアンチテーゼかな。
とはいえ、色々なヒロインがいて、花子はお酒に酔って吐き出したり。
でも、財力や才能、手腕、教養など、持ってしまっていたと思う。
花子がその典型で、持たされたゆえの引け目があった。
「私は、生き物として弱くなった」というモノローグが、気になっている。
「無神経」でいることでしか、強くなれなかったのだろうか。
漫画家生活の終わりが見えた今日、「バカボンのパパよりバカなパパ」スタート。

Tag:本 

『検察側の罪人』

映画化もされた、雫井脩介『検察側の罪人 上・下』(文春文庫、2017年)を読了。
サスペンス的な小説は、なぜか定期的に読みたくなるのです。
すでに発表されているキャスティングが、脳裏にちらつくことはなかったのですが、
これは、木村拓哉さんにとっても、二宮和也さんにとっても挑戦的であり、
それ以上に、新境地を開拓できる役柄だな、と思いました。
二宮和也さんの演じる沖野検事の事務官、橘沙穂役は吉高由里子さん。
木村拓哉さんは『HERO』、吉高由里子さんは『正義のセ』で検事役を経験済み。
それだけに、今作の一筋縄ではいかない「正義」「裁くこと」が際立ちます。
拳銃を野上に提供する、悪人の諏訪部。
「物は売っても人は売らない」という信条で、沖野にも真実を語らない。
一方に、そういう悪人がいながら、検事という法の番人が犯人を仕立て上げる。
松倉は、老夫婦刺殺事件は無実、でも、かつて女子中学生を殺している。
松倉を罰したいならば、釈放された松倉を殺せばいい。
ところが、野上は検事だ。
だからこそ、松倉を起訴し、裁判でこそ罰したい。
それゆえの、野上の罪。
沖野は、無実である老夫婦刺殺事件で松倉を裁くことはできないと思う。
冤罪を晴らす運動は、週刊誌のペンの力、白馬の騎士とされる有名弁護士、
という要素が加わることで、一気に動いていく、どこか流動的なもの。
冤罪を晴らされた松倉の今後のために、女子中学生殺害事件もなかったことに。
釈放された松倉の卑俗さにも、沖野は混乱してしまう。
罪を犯してから、家族を取り戻していく野上の状況も何とも皮肉だ。
彼の弁護を申し出た前川は、野上のために生きる、とまで言う。
検事になった野上も、弁護士になった前川も、雑誌記者になった水野も、
青春時代に出会った少女の未来が奪われた事件が、胸の底にこびりついていた。

 彼はずっと検事だったのだ。
 時効で罪の償いから逃がれた男に、
 彼はとてつもない代償を負わせることを思いついた。
 やってもいない罪で極刑を科す……およそ考えられるどんな手よりも、
 苛烈で凄まじい制裁方法だ。
 冤罪がもたらす、血を吐くような惨苦を知り抜いている検事だからこそ、
 選んだ手だとも言える。
 ただ一つ、それをするには、彼自身も大きな代償を払わなければならなかった。
 また新たに、罪の償いから逃がれる人間を作るわけにはいかなかった。
 それもやはり、彼が検事だったからだ。
 ほかには何も悔いることはないと言った。
 あの建物の中にいてなお、正義を見つめ続けているようであった。
 (雫井脩介『検察側の罪人 下』文春文庫、2017年)

調子に乗って自由を謳歌する松倉を見て、沖野は正義の「いびつさ」を痛感する。
沖野はおそらく、前川のような弁護士になるのだろうか、と思ったり。
橘沙穂役は、きっと抑制された演技を要求されるのかな、と読んでいましたが、
報道では、「幼いときのあることがきっかけで事務官になった」とあり、
それは原作にはない設定で、人物造型が加えられているのだろう、と期待します。

余談
「半分、青い。」、鈴愛が最初に秋風に見せた漫画で、律と清は55歳で再会。
それって、今後の何かにつながるのでしょうか、人ちがいで。
謝らない、と批判される鈴愛ですが、「ありがとう」は言うし、無神経さを認めてる。
何かと謝罪を求められる昨今への、これはメッセージなのかな。
秋風先生も回り道をして漫画家になった、テーマの1つは回り道だろう。

Tag:本 

「貴婦人はつらつ紀行」

では、イタリア公使夫人として来日し、旅行記を書いたマティルドとは?
発見された旅行記やスケッチから、その人柄が窺えるようです。

 貴婦人はつらつ紀行 煮魚「思い出したらよだれ」

 貴族の家に生まれたマティルドは、1867年6月に来日。
 69年6月の視察旅行に加わった時は、30歳だった。
 その頃は戊辰戦争が続いており、日本の国情は不安定。
 マティルドも旅行記の冒頭、
 外国人である自分たちに身の危険が迫っているとつづっている。

マティルドが来日したのは慶応2(1867)年6月、戊辰戦争の只中にあった。
新島八重がまだ鶴ヶ城に入る前、マティルドは日本にやって来た。
「身の危険が迫っている」と感じながら、公使一行は視察旅行を続けました。

 旅行記には、居留地を監督していた
 寺島宗則・神奈川県知事が計画に反対したが、
 厳重な警護を付けることで旅行が実現した経緯が記されている。
 史料を確認したベルテッリ・ジュリオ・アントニオ大阪大准教授は
 「外国人で若い女性だったから、危険な目に遭う恐れもあった。
 それでも同行したのは、
 彼女が強い好奇心と勇気を持つ女性だったからだろう」と話す。
 旅行記には、雨にぬれた蓑を着た日本人の様子を
 「ずぶぬれのダチョウ」と書いたり、日本人に見られる自分たちを
 「猛獣」に例えたりするなど、ユーモラスな表現が幾つもみられる。
 また途中で食べた日本料理を絶賛し、「しょうゆソースで煮た魚」
 「菜っ葉やインゲン豆、キノコ、なすを合わせた小鉢」などについて、
 「思い出しただけでよだれが出ます」と書く。
 
パリ生まれのイタリア伯爵夫人、日本料理が口に合った様子です。

 二本木(埼玉県入間市)で会った老僧が外国人に敵意を見せた際には
 「どの国でも、どの宗教でも聖職者は進歩を嫌います」と記述、
 鋭い批評性をうかがわせる。
 美術とともに音楽の素養もあり、
 この老僧が唱えるお経を聞き取って書いた楽譜も旅行記に記されている。
 ベルテッリ准教授は「彼女には多くの人が魅了されたようだ。
 勇敢さだけではなく、多くの才能にも恵まれた女性だったのだろう」と推察。
 イタリアに住むマティルドの子孫も、「知的で行動的。
 魅力的で美しい女性だったと語り継がれている」と話したという。
 ベルテッリ准教授がマティルドの史料の存在を知ったのは10年ほど前。
 子孫宅に大切に保管されており、昨年、初めて現物を確認した時は
 「感動しました。これは日本で紹介すべき重要な史料だと思った」と話す。
 今後、旅行記の邦訳出版も検討しているという。
 (2017年8月12日「読売新聞」電子版)

明治時代、私たちは、先進国からやってきた人々に教えられ、助けられた。
宣教とか貿易とか、彼らにも目的や思惑はあったにしても、恩を感じる。
マティルドの好奇心や勇気、書き留めておこうとした意思にも、感謝したいと思う。

余談
実は、「半分、青い。、だいぶ遅れて見ています。
だいぶ楽になったのは、批判ツイート、あら捜しツイートが気にならないこと。
見てしまったりしていても、かなり以前のことなので、忘れているから。
ドラマに関するツイートは、すごく勉強になるけど、つらくなることもあったり。
また犬が死ぬのが恐くて、もう飼えない秋風先生。
犬=女で、何匹にでもなっちゃう、という独特の論理を打ち立てる正人。
正人と律は、高校受験と引き替えに、一匹の犬の生命を助けた。

Tag:本 

「伊公使夫人 開国期の旅」

2017年8月12日「読売新聞」に、イザベラ・バードよりも早い、
幕末・明治初期に来日した個性による、内陸部の旅行記を発見、の記事。
イタリア公使夫人として来日した、マティルドの旅行記です。
実は、初代イタリア公使をめぐっては、すでにこのような本も出ていました。

 富澤秀機 『イタリア伯爵 糸の町を往く~明治2年の上州視察旅旅日記~』
 (2017年、上毛新聞社 事業局出版部)
 明治2年(1869)6月上州国・前橋に馬に跨った2組の外国人視察団が訪れた。
 横浜に赴任していたイタリアの初代公使
 ヴィットリオ・サリエ・ドゥ・ラ・トゥール伯爵一行。
 その行程を記録係として随行したサヴィオが綴った
 『日本の内陸部と養蚕地帯におけるイタリア人最初の調査旅行』
 (岩倉翔子訳)から当時の前橋藩をはじめ
 関東諸国の人たちが外国人をどのようにもてなしたかを読み解いた。

記録係が随行していた中で、公使夫人もまた、旅日記を書いていたことになる。
しかも、女性による地方の記録ということは興味深く、価値があります。

 伊公使夫人 開国期の旅

 幕末・明治初期のイタリア公使夫人として来日した女性による
 旅行記とスケッチが、イタリア・トリノ県の子孫宅に残されているのを、
 大阪大のベルテッリ・ジュリオ・アントニオ准教授(日伊交流史)が確認した。
 開国期に外国人女性が本格的に
 日本の内陸部を旅して書いた旅行記としては、
 英国人イザベラ・バードのものが最も早いとされてきたが、
 9年遡る時期の貴重な記録だ。

 マティルド 養蚕視察同行
 
 女性はフランス・パリ生まれで、初代イタリア公使の
 ヴィットリオ・サリエ・ドゥ・ラ・トゥール伯爵の妻マティルド(1838~1911年)。
 伯爵は1869年(明治2年)6月8~28日、養蚕視察のために
 現在の群馬、埼玉両県を旅し、マティルドも同行した。
 ベルテッリ准教授は昨年と今年、子孫宅で調査し、
 フランス語の旅行記の手稿(縦29センチ、横20センチ)121ページと、
 スケッチブック(縦9センチ、横18センチ)に描かれたスケッチ39枚を確認。
 今年2月に日本国内の学術シンポジウムで発表した。
 
パリに生まれ、イタリアの伯爵夫人となったマティルドにとって、日本は未開の国。
さまざまな不安もあったでしょうに、それ以上に興味があったのか。
開国されたばかりの日本について、記録を残したいと考えたのかもしれない。

 マティルドは20か所以上を訪ね、鴻巣(埼玉県)では「アリ塚のような群衆は
 好奇心にかられ前方へ、恐怖心から後方へと揺れ動きました」と描写。
 さらに「『シタ(下)ニイロ!」との叫び声。
 人々はひとかたまりになって屈(かが)みました。
 何とも驚くべき光景。私たちは正真正銘の封建時代に戻されました」と記した。
 渋川(群馬県)の風景には感動したようで
 「美しい豊かな田園が日の光に輝いていました。
 沼地の平原のあちこちに樹木がちりばめられ、
 その向こうの地平線は青い山々が連なっていました」とつづっている。
 一方、二本木(埼玉県入間市)では、老僧が煙管(きせる)を吸いながら
 「この上ない軽蔑の目で私たちをにらみつけていた」が、
 葉巻やリキュールを差し出すと「態度が柔らかくなった」という。

マティルドの関心は、風景だけでなく、外国人への人々の態度にもあったよう。
見慣れない外国人に、人々は失礼な応対もしたにちがいない。

 スケッチは鉛筆や水彩絵の具を用い、利根川、庭の灯籠、
 赤ん坊を背負った子どもなどを精緻に描いている。
 ベルテッリ准教授は「同時代の外国人男性があまり注目しなかった、
 近代化以前の日本人の衣食住や振る舞いが詳細に書かれている」と話す。
 この旅行については、随行員の一人、
 ピエトロ・サビオの業務日誌が知られるが、養蚕についての記述が中心だ。

女性ならでは(?)の視点、業務ではない立場からの視点が貴重でしょう。

 松田清・神田外語大客員教授(日本洋学史)によると、
 幕末・明治初期に来日した女性による本格的な内陸部の旅行記としては、
 1878年に東北地方などを旅した
 イザベラ・バードの「日本奥地紀行」(1880年刊)が最も早いとされてきた。
 松田教授は「江戸時代の風習が残る、
 明治初期の日本の地方をうかがうことができる史料。
 極めて価値が高い」と話している。
 (2017年8月12日「読売新聞」)

イザベラ・バードの「日本奥地紀行」のように、刊行はされませんでしたが、
およそ150年を経て見つかり、マティルドの筆致がよみがえりました。

昨日の群馬に続いて、今朝の大阪の地震が心配です。
これ以上、被害がひろがりませんように、大きな地震が起こりませんように。
地震に驚いて迷子になってしまった猫さんたちが、無事に帰ることを祈ります。

Tag:本 

『中野京子 特別授業『シンデレラ』』

『別冊NHK100分de名著 読書の学校 中野京子 特別授業『シンデレラ』』
(NHK出版、2017年)、書店で見かけて、さっそく読了しました。
私も、ディズニー映画(の影響を受けた絵本など)のイメージを持っていた。
ペロー版とグリム版の大きな差異など、改めて驚かされました。
物語の必須のアイテムだと信じていたものが、グリム版にはなかったのです。

 誰もが知っているつもりの物語は、誰も知らない豊かな世界で満ちている。

表紙に記されているメッセージの通り、疑ってみることが肝要。
案外にしたたかで強い像も浮かび上がる、グリム版のシンデレラ。
現代の感覚に近いのは、私たちの知らない彼女なのかもしれません。

Tag:本 

四季の花時計
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