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『天皇たちの孤独』

高校で古典を教えていると、一条天皇にしばしば出会うことになります。
すなわち、「源氏物語」の作者・紫式部が仕えた中宮彰子や、
「枕草子」の清少納言の仕えた中宮定子の配偶者だから。
紫式部に「日本紀の御局」とあだ名したり、定子といたずらに興じたり。
でも、実際の一条天皇は、王朝文学のみやびな世界の住人ではなく、
関白道長にないがしろにされた、傀儡的存在でもありました。

天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代 天皇たちの孤独―玉座から見た王朝時代
繁田 信一 (2006/12)
角川学芸出版

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日本史で教えられるような、摂政関白の時代。
お飾り的な天皇の現実は、王朝時代の華やかな文化の中心にいながら、
その華麗なイメージに反する、孤独で鬱屈した日々を送っていたのでした。
そして、道長の栄華の象徴でもある、中宮彰子。
定子の遺児を養育しながら、父道長に対する反発を募らせていく。

「源氏物語」も「枕草子」も、歴史の裏側への扉を閉ざしてはいません。