FC2ブログ

白無垢の夢

徳冨蘆花「黒い眼と茶色の目」、ちせ子=横井津世子は病床にあり、
決して好きではなかった叔母とはいえ、敬二=徳冨蘆花も胸を痛めていました。

 叔母さんの病氣は、過度の疲勞から血統にある中瘋を發したのであつた。
 幸に病氣は重い方ではなかつた。
 左の半身がやゝ不随になつたが、數月の靜養で
 多分立居に不自由はなくなるであらう、とドクトル・ペリーは云つて居た。
 其當座惛々と死んだ様に寢て、譫言ばかり云つて居た叔母さんも、
 日が立つと少しははつきりして來て、
 固有の低聲を尚低くしてきれぎれに言ふ様になつた。
 叔母さんはお稲さんの産前に見た自身の夢の話をした。
 叔母さんが夢に自分の着料に白無垢を縫ひ上げて居ると、
 お稲さんが來て着て見て、
 これは丁度私に合ひますから私のにしませう、
 と云つて着て了ふた、と云ふのである。
 敬二は現(うつつ)にまさる夢の世界の測られぬ深さを
 一目覗かせられたやうな氣がした。
 斯様(こん)な話をする時は、叔母さんもまだはつきりして居るが、
 時々は前後の接續(つヾき)もない片言の様な口をきいて、
 敬二の心(むね)を痛くした。
 (『徳冨蘆花集 第11巻』日本図書センター、1999年)

それにしても、このちせ子=横井津世子が見た夢とはいったい……。
夢の中で縫い上げた「白無垢」を、私に合うからと奪ったのがお稲=みね。
そのお稲=みねが死んだというのは、身代わりであったかのよう。
幼い孫を見ては、若い母親の代わりに自分が死ねばよかったのだ……。
ちせ子=横井津世子は、そう自分を責めたのかもしれません。

余談
「わろてんか」、自由恋愛の表現さえも検閲に引っかかるように。
駆け落ちした藤吉とてん、隼也とつばきは、まさに自由恋愛を選んだ人たち。
自由恋愛の浪漫性にこだわる伊能さんは、しかし、今も独身……。

Tag:山本久栄 

四季の花時計
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
FC2カウンター
プロフィール

もも

Author:もも

カレンダー
09 | 2018/10 | 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
月別アーカイブ
最近のコメント
最近のトラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索