FC2ブログ

江見の太郎=海老名一郎

徳冨蘆花「黒い眼と茶色の目」、ちせ子=横井津世子の介抱という共同作業で、
距離が縮まったかに思えた、敬二=徳冨蘆花と壽代=久栄の関係。
そこに姿を見せたのが、「江見の太郎さん」という人物です。
この人は、お稲=みねの死を敬二=徳冨蘆花に知らせ、
葬儀においては、又雄=時雄の袴を借りて、柩を運んだのでした。

 江見の太郎さんも時々荒神口に顏を見せた。
 髯の多いと、體格の雄偉と、鐵砲打が上手なのと、
 信仰が篤いので、四年生の評判者であつた。
 學課の出來はよくない方で、信仰に由て及第すると云はれて居たが、
 幹部の縁故で口利きであつた。
 女學校から傍聽に來る雄辯會の時なぞ、
 太郎さんが聽衆の中から進み出て大きな體をもたれかけて
 壇の下から高壇上の司會者と滿堂の視線を集めて打合せをしたりすると、
 エヘンエヘンの咳拂ひが禮拜堂に滿ちたものだ。

この「江見の太郎さん」のモデルは、海老名一郎かと思われます。
「幹部の縁故」があったと見えますが、海老名弾正の弟がこの一郎です。
「髯が多い」とあるのも、海老名弾正の写真から推測できます。
又雄=時雄の妹の美枝=みや子は、海老名弾正と結婚しており、
その関係からいっても、お稲=みねの葬儀に関わっているのもわかります。

 ある夜大きな角火鉢を中に、敬二が壽代さんと話して居る處へ、
 太郎さんの偉(おほき)な體が來て坐つた。
 壽代さんは直ぐ火鉢を三人の間に向け直した。
 太郎さんは髯の中からじやらじやらした聲を出して、
 戯談を壽代さんに云ひかけ、
 果ては平氣に其大きな手で壽代さんの小さい手首を無手(むず)と握つた。
 敬二は直ぐ振り拂ひもせぬ壽代さんを心に咎め、
 此大膽無禮な髯男に對して嫉妬と而して羨望を禁じ得なかつた。
 
壽代=久栄の手を握るなどという「大膽無禮」な人物、困ったものです。
それを見て、「嫉妬と而して羨望を禁じ得なかつた」とは彼らしい。

 兎に角敬二はお稲さんの死が二人の關係に新しい開展を促したことを
 意識せずには居られなかつた。
 協志社に歸ると、例の片貝君の室で、
 此間中からの出來事に關して色々の話が出た。
 お稲さんの死を預言した山本君は、お稲さんの死ぬる際に
 敬二と壽代さんを一緒にしてくれと云ふ遺言をした、
 揣摩(しま)ではない、確かな筋から聞いたのだと云ふ様なことを言つた。
 敬二は默つて傍向いて居た。
 進んで其言の實否を確むる必要を敬二は感じなかつた。
 (『徳冨蘆花集 第11巻』日本図書センター、1999年)

協志社=同志社に戻ると、片貝=磯貝由太郎の部屋で話をする中で、
お稲=みねの死を「預言」した「山本君」(モデルは誰?)が、また妙なことを言う。
お稲=みねが「敬二と壽代さんを一緒にしてくれ」と遺言した、といいます。
そんなことは初耳だった敬二=徳冨蘆花は、黙っているだけでした。 

余談
「わろてんか」、今週はやっぱり面白い。
今は昭和14(1939)年? まだ太平洋戦争には突入していないから、
「花子とアン」(昭和19(1944)年)の世相とはちがい、まだ大阪は平穏な感じ。
伊能商会の映画制作の人たちが、伊能を慕ってきてくれた。
北村笑店の「人は財なり」は、お国が求める忠誠や忠義とは真逆だろう。

Tag:山本久栄 

四季の花時計
天気予報

-天気予報コム- -FC2-
FC2カウンター
プロフィール

もも

Author:もも

カレンダー
09 | 2018/10 | 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
月別アーカイブ
最近のコメント
最近のトラックバック
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索