壽代=久栄の醜聞?

徳冨蘆花「黒い眼と茶色の目」、ヒロインは謎めいています。
山下壽代=山本久栄には、いくつかの「醜聞」があったかのように書かれます。

 學生としての敬二は、秋季入學當初の元氣はなかつたが、
 まだ相應に其位置を保つて居た。
 會(かつ)て敬二が惡ふざけして剣舞すると云つて
 其人の仕込杖の黑塗の鞘を破つて了ふた同室の一年生は、
 敬二がテーブルに一時間とつヾいて勉強するを見たことはない、
 唯數學だけちよいちよい見て居る、と人に云つた。
 敬二はあまり眞面目でない態度で敎場や敎師に對した。
 
どうも敬二=徳冨蘆花は、真面目な学生ではなかったようです。
学問に身が入らない敬二=徳冨蘆花は、隣の席の玉木君から梅暦をを借りる。

 敬二のテーブルにたまたま梅曆を見かけて、
 テーブルの邊(はた)を去り得ぬ者が一人あつた。
 敬二の同級で、神戸から來た志村鶴松と云ふ敬二に一つ年下の靑年である。
 母親の神戸の苦勞人で、ある顕貴の落胤と云はれて居た。
 漢學の素養がないので、漢文にふかい同級の姓も同じい志村愼太君に
 月々の文章も書いてもらふと云ふ噂があつて、
 多分恩人の口眞似であらう此頃出はじめて評判高くなつた敬二が兄の雑誌
 『人民之友』の文章を糞の様にけなして居た。
 眼尻が垂れて品は無いが、櫻の花の血色をした美男であつた。
 志村君自身も美男が自慢で、寒い頃は
 格子縞の絹ハンケチを咽喉にまいて羽織の紐を紅の毛絲で結び、
 日が熱すれば鍔廣の麥稈(むぎわら)帽に五色の毛絲の鉢巻をして
 阿彌陀にかぶつた下から女の様に前髪を垂らして居た。
 志村君は敬二を競爭者の様に看做した。
 ある寒い朝、禮拜堂の大暖爐を焚く地下室に敬二と彼と立つて居た。
 志村君にも子分があつた。
 年中咽喉加答兒(かたる)に罹つて居るかの様に
 皺嗄れ聲を出す豫備校生の少年であつた。
 志村君は其少年に向ひ『俺(わし)と得能君と何方が白い?』ときいた。
 (中略)
 それから美貌の爲に兎角艶聞を流すことを得意げに物語り、
 つい先年も女學校の人と噂を立てられて困つたと云つて、
 『其人の名は山下壽代と云ふ人』と聲を落した。
 (『徳冨蘆花集 第11巻』日本図書センター、1999年)

つまり、敬二=徳冨蘆花も美青年だったのか、志村鶴松はライバル視。
志村鶴松が、「敬二が兄の雑誌『人民之友』」=『国民之友』をけなしたというのは、
敬二=徳冨蘆花にとっては、少々心地よかったかもしれない。
その志村鶴松と「噂」になっていたのが、ほかならぬ山下壽代=山本久栄という。
それは、「美貌の爲に兎角艶聞を流すことを得意げに物語」った話でした。

Tag:山本久栄 

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