「御斷りします」「何故?」

徳冨蘆花「黒い眼と茶色の目」、敬二=徳冨蘆花も壽代=久栄も無言のまま、
おくら=窪田うら、次平=土平の視線のある家を出て、歩き始めます。

 門の潜りがぐわらりと開いて、壽代さんは出て往つた。
 敬二も玄關から誰の下駄やらはいてつヾいて出て往つた。
 荒神口の家は、東は直ぐ長い河原町の大通り、西は土塀に劃(しき)られた
 公卿屋敷の間を矩形(かねなり)に三四折して寺町通りに出るのであつた。
 敬二は壽代さんに眴(めくばせ)して西へと志した。
 門を出て十間あまり、角を廻るまでは、濶(はヾ)二間ばかりの巷路を、
 壽代さんは右の方、敬二は左の塀についてあるいた。
 二人は一言も云はなかつた。
 壽代さんは、今日は袴をとつて、荒い縞の綿入を着て、
 韤(くつたび)に誰かの駒下駄を突かけて居た。
 先刻から曇つて居た空は、二人が門を出る頃からぽつりぽつり
 霙(みぞれ)の様な冷たい小粒の雨を落して來た。
 角を廻ると、直ぐ次ぎの廻り角の前で、二人は立止まつた。

冷たい霙の降る中、敬二=徳冨蘆花は、壽代=久栄の気持ちを知ってはじめて、
二人きりで向き合い、話をすることになったのです。
ドラマチックなシーンにちがいありませんが、敬二=徳冨蘆花は相変わらず。

 『御返事は?』
 壽代さんは俯いたまゝ明瞭(はつきり)した聲で尋ねた。
 『御斷りします』
 敬二はやゝ低い聲で答へた。
 『何故?』
 突然に曲り角の黄昏から雨傘をさした丈の高い男が出て來た。
 敬二は膽(きも)を冷やした。
 又雄さんに違ひない。然し違つた。
 其れは又雄さんではなく、
 公卿華族でもあるらしい八字髯の五十ばかりの人であつた。
 其處に佇む二人の若い男女を胡亂(うろん)さうに見かへり見かへり、
 爪革のかゝつた高足駄を鳴らして往つて了ふた。
 (『徳冨蘆花集 第11巻』日本図書センター、1999年)

このあたり、何やら下駄にこだわって書かれています。
ふと現れた男が、又雄=横井(伊勢)時雄ではないかと慌てる敬二=徳冨蘆花。
壽代=久栄を思っていながら、そして壽代=久栄の思いを知っていながら、
次平=土平への宣言の通りに、「お斷りします」と言ってのけました。
しかし、壽代=久栄は、それでは納得できません。
敬二=徳冨蘆花の自分に対する好意は、これまでも感じてきたはず。
「何故?」という問いかけに、敬二=徳冨蘆花はうまく答えられないのです。
そして、そこにも、勝枝=(鈴木)安栄の影がちらつくのでした。

余談
エフゲニア・メドベデワ(ロシア)が、カナダに練習拠点を移し、
羽生結弦と同じく、ブライアン・オーサーコーチに師事することを発表。
次の五輪の金メダルに向けて動き出した、という感じでしょうか。
理由はいろいろとあるのでしょうが、来季の彼女の演技が答えだと思います。

Tag:山本久栄 

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