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「媒妁が婿になり、婿が媒妁に相成申候」

徳冨蘆花「黒い眼と茶色の目」、言葉や態度とは裏腹に、
敬二=徳冨蘆花の壽代=久栄に対する気持ちは、決まっていました。
ところが、すぐに気持ちに応えるのは「あまりに脆いやうでいやだ」と考えます。
また、壽代=久栄が自分と結婚してもいい、と思っていると知ってからも、
敬二=徳冨蘆花は、彼女の中に「分かることを欲しない様なもの」を感じている。
それを明らかにしなくてはならない、と思いつめるのでした。

 敬二の心は壽代さんの心が分かつた時に最早きまつて居た。
 然し敬二は流石においそれと心を明かすを
 あまりに脆いやうでいやだと思ふた。
 壽代さんの身邊には、敬二が知らぬ、分からぬ、
 また分かることを欲しない様なものが少からず立罩(こ)めて居る。
 敬二は形式だけでも其の疑團を解く可き手段をとらねばならぬと思ふた。
 お稲さんの死後、壽代さんを又雄さんの後妻に、
 と云ふ議があつたことを薄々敬二も知つて居る。
 それは立消えになつたらしいが、
 實際今如何様な事になつて居るのか、ぱつちりしない。
 志村鶴松との昔の浮名は、十四五の淡い事であつたとするも、
 最近次平君との接近は敬二も見かねる程人目を思はぬ仕方である。
 如何様な心底で其様な態度をしたか。

驚きの事実は、妻であった姉の死後に妹と再婚するのはよくある話ながら、
又雄=時雄の後妻に壽代=久栄を、という話があり、どうも頓挫したらしいこと。
その事実もはっきりとはせず、次平=土平への「接近」も気になる。
壽代=久栄が「如何様な心底で其様な態度をしたか」、確かめたいわけです。

 敬二は疑問の件々を箇條書きにした。
 書いてしまつた處に、昨夜とは打て變つて、
 今日はさつぱりとあきらめたらしい次平さんがやつて來て、
 壽代さんも今荒神口に來て居るから用があるなら文使をしようと云ふ。
 敬二は次平さんの顏色を見て、
 決して内容を見ぬと云ふ條件の下に、質問狀を手渡した。
 『媒妁(なかだち)が婿になり、婿が媒妁に相成申候」
 と次平さんは笑つて、敬二の手紙を懐に入れて歸つた。
 (『徳冨蘆花集 第11巻』日本図書センター、1999年)

次平=土平は、「今日はさつぱりとあきらめたらしい」様子だったとか?
壽代=久栄への「文使」まで名乗り出た、次平=土平でした。

Tag:山本久栄 

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